ブログ布留川のほとりから

赤と白、珊瑚と真珠はどちらがお洒落か ~ おしゃれ話その7

2022年02月15日 (火)

髪飾りを彩る珊瑚(さんご)は大人気でした。幕末に土佐沖で珊瑚が採れるまで、珊瑚はほとんどが地中海産の輸入品でした。江戸は桃色、上方は真っ赤な色の珊瑚が珍重されました。一方、真珠は用いられることがなかったようです。真珠の存在は当然知られていて、「真珠は鰒(あわび)の玉を最上とするが、これはほとんど入手できない。アコヤ貝の伊勢真珠とアサリ貝の尾張真珠があって、小さなものは薬用とする」という記述があります(『和漢三才図会』巻47 1712)。では大きなものはどうしたのか?光沢がある伊勢真珠の大粒は「華人これを喜んで求め、価はたいへん貴い」と同じく書かれています。中国人が装飾用に高値で買い取っていたのです。江戸時代全般を見ても、真珠が用いられた髪飾りは出ていません。装飾品の禁令にもその名称は出てきません。「日本人が最も多く持つジュエリー」と言われる美しい灰白色の真珠。珊瑚同様に、びらびら簪の飾りに加工できたと思いますが、なぜ使われなかったのでしょうか。真珠はすりつぶして薬にしたからです。当然ながら、お洒落よりも命優先ですね。

 

第88回企画展ブログ8】

日本民俗室 H 

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