楽浪墓出土の銅鍑・銅甑の保存・修復が完了しました。
2020年04月17日 (金)
天理参考館3階「世界の考古美術」の朝鮮半島コーナーで常設展示している楽浪墓出土の銅鍑(どうふく)・銅甑(どうそう)の保存・修復が終わり、1年ぶりに展示を再開しました。写真の下部はソロバン玉のような形をした銅鍑と呼ばれるもので、この上に甑(こしき)を置いて、カマドに掛けて蒸し器として使いました。
銅甑は中国漢代に通有のもので、中国で製作されたものと推測されています。一方、銅鍑は類例が少なく粗造であることから、朝鮮半島で製作され、この甑と組み合わされて墓に副葬された可能性が指摘されています。この銅鍑は類例が唯一、長崎県クビル遺跡出土品に認められるだけの大変希少な例です。これらは、日本に伝わる以前の蒸し器の姿を教えてくれています。
この銅鍑・銅甑は新館オープン以来、常設展示されてきましたが、各所に錆が出ていたため、常設展示を続けるには心配がありました。そこで、公益財団法人朝日新聞文化財団から保存処理と修復の助成金を得て2019年4月から公益財団法人元興寺文化財研究所で保存と修復作業を行いました。
作業はまず、処理前の状態を記録するための写真撮影を行い、メタルの残存状況を確認するためのメタルチェックを行いました。また、遺物の構造や劣化状態の確認のためのX線撮影を行いました。こうして、処理方針を検討して、クリーニングを行ったのち、保存処理が実施されました。また、補填の必要な個所にはアクリル樹脂が補填されました。これで引き続き安心して常設展示を行うことができるようになりました。
現在、当館は新型コロナウイルス感染症対策のため休館となっておりますが、1日も早く感染が収束し、みなさまにご覧頂けることを念じております。
考古美術室 H