〇〇〇〇の皮で作られたカヤック
2018年05月18日 (金)
第81回企画展「大自然への敬意 ―北米先住民の伝統文化―」の会期も残すところ半月ほどとなりました。開幕した頃は桜の花が舞い散る麗らかな陽気でしたが、最近は夏を先取りするように蒸し暑い日が続いています。当館の展示室は1年を通して快適な気温に調整していますので、暑さしのぎにでもお立ち寄りいただければと思います。
さて、今回の企画展ではかなり大型の資料を1点出品しています。アラスカとロシアの間に連なるアリューシャン列島にあるキング・アイランドという島で、今から100年以上前に作られたカヤックです。カヤックとは、乗員が足を伸ばした状態で着座し、パドル(櫂)を漕いで航行するボートのことを指します。全長は443cmもあり、収蔵庫から展示室へ運び入れるまで一苦労したほどの大きさです。
このカヤックの最大の特徴は、アザラシの皮で船体が覆われているということです。キング・アイランドの人々はアザラシを狩猟して、その肉を食料とするだけでなく、皮も無駄にすることなく様々な生活道具に活用します。極寒の海では、船にきっちりと防水加工を行うことが非常に重要です。このカヤックも船内に水が浸入しないように、アザラシの皮をくまなく縫い合わせてあります。北米先住民の知恵と技術には本当に驚かされます。
当館の常設展示室1階には、チベットで「チュチャワ」と呼ばれる羊の皮を浮き輪にした筏(いかだ)もあります。珍しい船に関心のある方はぜひ両方ご覧になり、文化的多様性を味わっていただければと思います。
【第81回企画展ブログ7】
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