図版ⅩⅥ「壺片」原画
2015年05月14日 (木)
それでは、少し展示資料の解説をしてみましょう。これは報告書図版16の原画です。近代的な考古学手法が未だ確立していなかったこの時期に、美術的価値の低い土器片に注目して図として残している点だけでも評価されるべきでしょう。
下方の鉛筆書きと、絵に振ったインク書きの番号は、シュリーマンの直筆です。下部には濃い文字で図のネームキャプションが書かれていて、その後に縮尺1/2とあります。原画では原寸で遺物を描いていますので、印刷での縮尺を指示したものです。
描かれている土器片は、前8世紀頃の幾何学様式土器です。ティリンスの発掘日誌が残っていない今日において、この原画はティリンスの発掘現場を伝える貴重な第一級資料と言えます。
シュリーマンの息づかいが聞こえてきそうですね。もちろん原画ですから、世界に1つしかありません。
【シュリーマン展ブログ13】
考古美術室 T