第95回企画展「器にみるアンデス世界―ペルー南部地域編」の見どころ(Ⅲ部)
2024年05月29日 (水)
Ⅲ部では、「ナスカ研究の最前線」と題して、山形大学ナスカ研究所と山形大学附属博物館のご協力を得て、同大学が2004年から行っているナスカの地上絵の研究に関するパネル展示をしています。これらのパネルは2023年3月15日から5月12日まで山形大学附属博物館で開催された「地上絵の謎と保護」展で展示されていたものをお借りしています。
Ⅲ部は①山形大学のナスカ研究の歩み、②研究者たち、③地上絵の謎、④地上絵の保護、の4つのパートに分かれていますが、見どころ(読みどころ?)が絞り切れないくらい、充実した内容です。
冒頭の①山形大学のナスカ研究の歩みでは、世界で唯一地上絵の調査が許可されるようになった経緯や、1920年代に地上絵が発見されてから現在までの調査方法の変遷がまとめられています。続く②研究者たちでは、情報科学、認知心理学、考古学、AI研究、環境地理学、文化人類学の研究者によるそれぞれの研究成果が紹介されています。そして③地上絵の謎では、地上絵の変遷や、地上絵が描かれているナスカ台地の自然環境の説明にくわえて、ナスカ台地の地上絵が聖地カワチ神殿へのルート沿いに描かれていること、そしてナスカ早期の小型の地上絵は、カワチ神殿の建築軸になった山のふもとにつくられた住居間を移動するルートの道標であったと考えられていることが紹介されています。最後の④地上絵の保護では、山形大学ナスカ研究所がペルー文化省、在ペルー日系人社会、そして日本人の有志と連携して地上絵の保護活動に取り組んでいることが紹介されています。
これらのパネル展示に関連して、3階ホールでは、山形大学の関連機関が制作された「ナスカの地上絵と神殿をめぐる巡礼 巨大な地上絵の分布規則」映像を上映しています。Google Earthを活用した映像をもとに、山形大学の研究で明らかになったナスカの地上絵の分布規則について解説されています。また近くには、ナスカ台地の衛星写真を300分の1に縮小印刷したマットを山形大学附属博物館からお借りして、体験コーナー「地上絵を探せ!」を設けております。
閉幕まで残り一週間ですが、是非この機会を逃さずに、ナスカの地上絵研究の最新成果をご堪能下さい。
【第95回企画展ブログ6】
海外民族室 荒田