第86回企画展「器にみるアンデス世界 ―ペルー北部地域編―」月の聖獣
2021年06月09日 (水)
早いもので、本展も残すところ一週間となりました。
そこで最後に「月の聖獣」についてご紹介したいと思います。すでに5月28日の当館Twitterにもアップしていますので、併せてご覧ください!
月の聖獣は、ペルー北海岸の神話世界で重要であったと考えられています。ペルー北海岸で栄えたガジナソ文化、ビクス文化、モチェ文化、チムー文化、チムー=インカ文化だけでなく、ペルー北高地のレクワイ文化でも、土器や金属製品そして織物に表現されました。少し大胆な言い方になりますが、紀元前200年頃から16世紀まで2000年近く信仰の対象であり続けたのです。日本に置き換えると弥生時代から室町時代までに相当しますから、いかに重要であったかお分かりいただけると思います。
月の聖獣のモデルとなった動物については、ジャガー、キツネ、イヌやイグアナなど諸説ありましたが、近年の研究でヤマネコである可能性が高いと指摘されています。ヤマネコは海岸地帯の湿潤地から標高1000mまでの広い範囲に生息していますが、その生態についてはよく分かっていません。しかし、ヤマネコが夜行性であることから、月と関連する神話世界の動物として創り出されたと考えられています。さらに、ペルー北海岸では太陽よりも月が重要視されていたことが植民地時代の記述にあることは、大変興味深い点です。
月の聖獣は天界だけでなく、海や人身供犠とも関連付けて描かれたと言われます。また、時代の経過とともにその姿を変化させ、チムー文化では王国を象徴する存在となったと考えられています。
ペルー北海岸の古代文化とともに進化を遂げた月の聖獣は、本展のI部からIII部の出品資料3点に表現されています。残りわずかですが、月の聖獣を探しにご来館ください。
【第86回企画展ブログ6】
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