第86回企画展「器にみるアンデス世界 ―ペルー北部地域編―」III部:笛吹ボトルの見所ご紹介
2021年06月02日 (水)
本展のIII部では、器体に液体を入れて揺り動かすことで音を鳴らす笛吹ボトルを展示しています。
笛吹ボトルには、空洞の球に孔が1つあけられた「笛玉」と呼ばれる構造があります。さらに通風ダクトの役目をする筒状の部品を取り付けた「連結笛玉」と名付けられた構造をもつものもあります。どちらの場合でも、笛玉の孔に適切な角度で空気が吹き入れられると、カルマン渦と呼ばれる渦ができ、この渦の変動が音源となります。そして笛玉の容積が小さいほど音程が高くなり、大きいほど低く重々しくなります。
笛吹ボトルの多くは、前後や左右の2つの胴部を連結筒でつないだ双胴タイプです。それぞれの胴部の片方に注口部を、そしてもう片方に笛玉や連結笛玉を付けます。胴が1つだけのものもあり、笛玉が胴部に直接付けられたり、動物や人物を象った上部構造にあけられた孔と角度を合わせて、そこに接合する把手にはめ込むように付けられたりします。一口に笛吹ボトルと言っても形態が異なり、文化によって造形に違いが見られます。また、本展で出品している資料全般に言えることですが、作り手の遊び心が感じられます。
本展では、笛吹ボトルの内部構造についても理解していただくために、「令和2年度・3年度国立民族学博物館公募型メディア展示」事業の支援により、タブレット端末で内部構造を閲覧できるメディアコンテンツを制作しました。新型コロナウイルスの感染予防対策を講じて5月25日より公開し、閉幕まで企画展示室に常設しています。自由に操作・閲覧していただけますので、興味のある方はご覧いただければ幸いです。
笛吹ボトルの起源は、エクアドル海岸部に紀元前1200年頃登場したチョレーラ文化にあると考えられています。その後、中央アンデス地帯に伝えられ、植民地時代初期の紀元後1600年頃まで各地で作り続けられました。残念ながら製作伝統が断絶して使われることが無くなったので、その用途についてはよく分かっていません。葬送儀礼や人身供犠で使われたのではないかと考える研究者がいますが、渦巻き文や階段文が描かれる笛吹ボトルがあることから考えると、的外れな仮説ではないのかもしれません。
【第86回企画展ブログ5】
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