ブログ布留川のほとりから

第86回企画展「器にみるアンデス世界 ―ペルー北部地域編―」 I部:古代アンデスの土器に象られた世界の見所ご紹介

2021年05月19日 (水)

中央アンデス地帯で土器の製作が始まるのは紀元前1800年頃と考えられています。日本では縄文時代後期に相当する時期です。日本と比べると土器の登場がはるかに遅かったにもかかわらず、その後、中央アンデス地帯の各地でバリエーションに富んだ土器がつくられます。

 

I部では、紀元前1200年頃から植民地時代までの土器を、年代が古い順に展示していますが、ペルー北海岸を中心に、植民地時代初期まで作り続けられた器形があります。それは鐙型注口壺(あぶみがたちゅうこうつぼ)です。輪のように形づくった頸部の中央に注口を付けた土器で、その形が馬具の鐙(あぶみ)に似ていることからこのように呼ばれます。胴部には動植物や人物が立体的に象られたり、刻線で抽象化したモチーフが描かれたり、顔料で動植物や神話世界が描かれたりします。この鐙型注口壺にはトウモロコシでつくられたお酒が入れられていたと考えられています。トウモロコシのお酒はチチャと呼ばれ、インカ帝国の儀礼で供物として捧げられたことが分かっていることから、インカ帝国以前も同様に用いられたと考えられています。したがって、チチャを入れる鐙型注口壺は普段使いではなく、特別な用途で用いられたハレの器であることが分かります。さらに、鐙型注口壺はお墓の副葬品として出土することが知られています。

 

展示している鐙型注口壺には、当時食べられていたと考えられる果物や動物のほか、神話世界の戦いなどが表現されています。被葬者は神官だったのか?、あるいは象られた動植物は被葬者の好物だったのか?など、土器を通して古代の人々の姿を思い浮かべて思いを巡らすのは楽しい!と思うのは私だけでしょうか?

 

鐙型注口壺以外の器形を含めて、時代や文化によって造形や色など土器の特徴に違いが見られるのも見所の一つです。ご来館の際は、お気に入りの土器を見つけてください!

 

 

 

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