刊行物

天理参考館報

天理参考館報 第34号

A4版・カラー図版1P・モノクロ70P、税抜き500円

2021.10発行

頒価:550円

(学)天理大学出版部


I 論文・研究ノート

 天理参考館の中国民間信仰関連資料②……中尾徳仁

当館所蔵資料の中から、「道士・法師・霊媒が儀礼や託宣などの際に使うもの」を紹介する。本稿では、道士の帽子「網巾」・雷令符・法印・七星剣・天逢尺・龍角・奉旨・ポエ・法鞭・師刀・沙魚剣・釘棍・刺球を採りあげた。上記資料の多くは台湾で20世紀中期に収集されたものであるため、台湾における各資料の使用例を中心に解説する。ただし一部の資料では、中国大陸での使われ方についても言及する。

 天理参考館所蔵台湾パイワン族の銅製形象柄の短剣について……早坂文吉・青木智史

当館は台湾原住民族、パイワン族に伝わる家宝である銅製形象柄の短剣、およびその柄を合計24点所蔵している。本稿ではこれらの形象柄の短剣について、これまで詳しく触れられてこなかった柄に装飾されている人物像・人頭の意匠に注目し、その形態的特徴を紹介する。さらに今回、蛍光X線分析法による自然科学的な材質調査を行った。形象柄の金属材質の同定とともに、型式、収集地を踏まえたその製作背景について検討を加えた。

 古墳時代終末期の大型古墳による古墳の破壊について―天理市塚穴山古墳の検討―……日野 宏

塚穴山古墳は明日香の石舞台古墳と比較しても遜色のない規模の横穴式石室を埋葬施設とする我が国を代表する終末期古墳である。1988年の調査では外堤の下から、「埴輪棺墓」や「石棺墓」などが発見されたほか、堀の埋土からは古墳時代中期末から後期末の多数の須恵器が出土した。これは古墳の造営に際して、小古墳を破壊して墳丘を構築した可能性が考えられたので、多数の小古墳を破壊して築造された石舞台古墳の例を参考にこれを論証した
西北イラン出土の青銅製獣頭飾角杯に関する補論(その2)……巽 善信・青木智史

本誌第32号に掲載した「西北イラン出土の青銅製獣頭飾角杯に関する補論」の続編である。前回の補論で持ち越した、二重構造であるかどうかを確かめるためにX線写真撮影とX線CT撮影を実施した。その成果を報告するとともに本例の学術的位置づけを行った。調査により二重構造であることが明らかとなった。これは今のところ報告されている限りではハサンル出土の角杯とゴルディオン出土のシトゥラのみであり、角杯に限定すれば本例は世界で2例目ということになる。また外側と内側の間には粘土が詰められていることも判明した。これはハサンルとゴルディオンの出土例では知られていない技法であり、今後の研究に寄与するものと考えられる。

 X線CTの活用により明らかとなった館蔵アンデス土器資料の内部構造……荒田 恵・河村友佳子・日髙真吾

当館は約400点の中央アンデス地帯の土器を所蔵している。そのうち、ペルー北部地域の鐙型注口壺や笛吹ボトルなど計18点の資料について、国立民族学博物館共同利用型科学分析室の協力を得てX線CTを活用した内部構造の分析を実施した。本稿では、この分析で成果が得られた資料を対象に、20世紀後半に盛んになった贋作づくり(補修)の痕跡や、古代アンデス文化でつくられた笛吹ボトルの内部構造について報告する。

II 事業概要
 1 展観
  (1)特別展 (2)天理ギャラリー展
 2 調査研究
  (1)海外民族室 (2)日本民俗室 (3)交通文化室 (4)考古美術室
 3 資料収集・保存
  (1)収蔵資料概要 (2)新収蔵資料 (3)保存処理・修復
 4 普及活動
  (1)トーク・サンコーカン(公開講演会) (2)ミュージアムコンサート「参考館メロディユー」 (3)ワークショップ (4)マンデートーク (5)令和2年度 文化庁 地域と共働した博物館創造活動支援事業「ヤマト・天理の歴史文化をめぐる」プロジェクト