伝統的な民族衣装は世界各地でその姿を消しつつありますが、メキシコやグアテマラでは今もなお愛用されています。女性用の衣装は上着と巻きスカートにベルトが基本となっています。ウィピールは首ぐりにそって開けられた開口部に頭を通して着用される貫頭衣です。文様や色づかいは、それぞれの地域の伝統をよくのこし、多くの美しいウィピールを見ることができます。
本例は白地に赤の横縞を入れ、縞の中に黄や緑など多くの色糸で幾何学文様を表現しています。色糸を織り込んで文様を表わす「縫取織」の技法によっているのです。原始機と呼ばれる極めて簡単な織り具で織られており、布巾はせいぜい30~40cmを限度とするため、3枚の布を縫いつないで仕立てられています。布の繋ぎ目は刺繍糸で華やかにかがってあります。