アンデス文明を育んだ現在のペルー・ボリビア・コロンビアの各地から、副葬品として出土する多くの土器は、変化に富んだ形と美しい彩色で知られています。特に人物・動植物・魚介・鳥など、さまざまな姿を巧みに象った一群の象形土器には、写実に富んだ造形が多く、アンデスの人々の暮らしぶりを彷彿とさせています。本例は、立て膝姿で杯を手にするユーモラスな人物象形土器で、おそらくトウモロコシを原料とするチチャ酒を飲む姿を表現したものと考えてよいでしょう。ざらざらとした白い地肌に、大雑把な淡い墨色で彩色した素朴でおおらかな造形の土器がチャンカイ文化期の特徴です。