顔は幼児に似せ、身体は伏せた犬の姿を模してつくられた張子の箱です。犬筥(いぬばこ)、犬張子、お伽犬(おとぎいぬ)ともよばれます。犬はお産が軽く、子どもの成長がよいとされることから室町時代ごろからお産をする部屋に飾られるようになります。箱の中には安産のお守りや化粧道具をいれます。元々は、平安時代にけがれやわざわいを祓うため宮中の御帳台(みちょうだい)の左右に狛犬(こまいぬ)の像を置いたのがはじまりとも言われています。そのためか雌雄一対で飾られ、向かって右の雄は口を軽く開けて「あ」、向かって左の雌はしっかりと口を結んだ「うん」の姿で向かい合っています。江戸時代になると、安産のお守りから幼児の魔よけのお守りともなり、雛道具の一つに加えられて桃の節句に華やぎを添えます。