天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化伝統的競走競技「走鏢」の優勝旗「冠軍旗」(でんとうてききょうそうきょうぎ「ぞうぴゃお」のゆうしょうき「かんぐんき」)

台湾 南投県
民族集団名 パゼッヘ
20世紀前半
長108.0cm 麻布
資料番号:21518

展示中 1-0

2020年に当館は創立90周年を迎えました。これを記念した特別展「スポーツの歴史と文化」を開催する予定です。今回はその出品資料の中から、台湾先住民の民族資料を紹介します。
台湾先住民の一グループ、パゼッヘの人びとは現在の南投県に多く暮らしています。かつて、パゼッヘの集落では、米の収穫を終えた頃、祖先の霊魂を祭る儀式が行われました。パゼッヘの人びとは集落の安寧、耕作の豊稔、狩猟の収穫もすべて祖霊の冥護によるものと考えられてきました。
また、パゼッヘの男性の間では、古くから鹿追などの狩猟の為に、野山を駆けまわることができる健脚が大変重要視されました。農耕の時期を終え、狩猟期に入る節目に行われた祖霊祭の中で、競走競技「走鏢」が開催されました。この競走も単なる競い合いではなく、祖霊に捧げる儀礼的意味合いをもつ競技であると考えられます。
少年や若い青年層の男性が3、5、7人などの奇数を一組として、8~12㎞の一定距離を競走しました。掲出の優勝旗はゴールに掲げられ、勝者に授与するためのものです。この優勝旗はパゼッヘの女性が編んだもので、パゼッヘの伝統衣装の盛装にも見られる赤色の独特な文様が見られます。
日本統治時代以降、台湾先住民の文化も大きく変容し、この競走も一時行われなくなりましたが、1990年代以降の文化復興運動の中で、この競走は復活し、毎年農暦の11月の新年を迎える祭りの際に行われています。現在では男性だけでなく、女性も参加できるといいます。優勝旗も、再び本品のような織文様の旗が製作されるようになりました。

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