天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化土地の契約書「新港文書」(とちのけいやくしょ「しんこうもんじょ」)

台湾 台南市
民族集団名:シラヤ
1741年(乾隆6)11月
縦50.0㎝ 横46.5㎝ 紙
資料番号:2001E322

展示中 1-4

「新港文書」とは台湾の先住民の一グループ、シラヤの人びとと漢民族との間で交わされた土地の貸借や売買などについての契約書です。新港とはシラヤの人びとが暮らしてきた、現在の台南市内にある集落の旧名を表します。
オランダによる台湾統治が行われていた時代(1624~1662年)、台湾にやってきたオランダ人宣教師や行政官は、布教を進める上の必要性から、また、政務を進める補助として、ローマ字でシラヤ語の字典を編纂(へんさん)しました。同時にもともと文字を持たなかったシラヤの人びとに、ローマ字で自らの言葉を書き記すことを教えました。
オランダが撤退したのちの清朝統治の時代には、中国大陸から漢民族が続々と台湾に移り住んできました。かつてシラヤの人びとが住んでいた土地の売買が、本品のような漢文とともにシラヤ語のローマ字が対照併記された契約書を通して行われました。
さて、この文書が書かれた年代に注目したいと思います。現存する約140件の「新港文書」のうち、最も年代が古いものが1683年で、最も後のものは1813年です。本品は1741年(乾隆6)11月に書かれたものです。オランダによる統治は1662年までですので、オランダ人が台湾から離れたのちも、シラヤの人びとが非常に長期にわたって自分たちの言語をローマ字で記述し続けてきたことがわかります。
現在、「新港文書」はシラヤの人びとの歴史を知る上だけでなく、台湾史においても貴重な史料となっています。
なお、当館の常設展示室では本品の複写をパネルで展示しています。