天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化腰帯装飾用の刺繍布切れ(こしおびそうしょくようのししゅうぬのきれ)

台湾 西南部平地
民族集団名:タイヴォアン
20世紀前半
縦17.5cm 横30.5cm 素材:木綿布
資料番号:81-150

展示中 1-0

台湾の西南部平地(高雄市周辺)に暮らす平埔族(へいほぞく)、タイヴォアンの伝統衣装の製作は、1940年代以前に途絶えたと考えられ、現在、復元されたものを除けば、現地の日常生活ではもう見ることができなくなってしまっています。天理参考館では、およそ80年以上前のタイヴォアンの人々の手によって製作された刺繍布切れをおよそ100点収蔵しています。
こうした布切れは女性の手芸によるもので、黒色の木綿布地に多色の色鮮やかな木綿糸を使って縫い上げられています。盛装用衣装の袖口や、頭巾、腰帯の縁などに装飾されました。
この刺繍布切れは腰帯の先端に装飾されるものです。連続した菱形文様のほかに、花の文様が見られます。この文様は「雞角刺(和名:チョウセンアザミ)」、または「圓仔花(和名:センニチコウ)」という花がそのモチーフといわれています。この2種類の花はタイヴォアン集落に自生しており、「雞角刺」は薬剤に、「圓仔花」は伝統的な夜祭の際に着用する頭飾りに使用されてきました。
さて、衣装に付随した形ではなく、なぜこうした布のきれ端だけが大量に残されているのでしょうか。収集時の情報も乏しく、詳しいことは未だにわかっていませんが、おそらく刺繍に長けた女性の集団が存在し、こうした刺繍の切れのみを周辺に住む他の民族グループへ物々交換で提供したり、商品として販売を行っていたことが考えられます。