日本初の公営電気鉄道として明治36(1903)年に開業した大阪市電では、同45(1912)年1月12日から、それまでの区間制料金を改めて、1回乗車均一料金、乗換無料制となりました。
当日中は何度乗り換えても最終目的地まで行けるという制度で、車掌が乗換券を所持し、乗客の行き先によっては、普通乗車券と乗換券を2枚発売し、1回目の電車の下車時に普通乗車券を回収、乗り換え後の電車は乗換券で乗車することができました。2回以上乗り換えの場合は乗換券を発行し直し、最終目的地で乗換券を回収しました。乗り換えしてもしなくても料金は同じで、乗り換えずに乗換券を収集する人も現れました。
大阪市電は公営ということもあり、明治天皇の大喪儀や大正天皇大礼、皇太子裕仁親王(昭和天皇)成婚等、皇室関連行事にあたり積極的に記念乗車券を発行していました。掲載は昭和天皇大礼時の記念乗換券で、通常の様式に「奉祝」の文字と国旗を加刷し、午後用、「そ」系統(春日出車庫)で発行されたものです。
昭和3(1928)年11月10日、京都御所において昭和天皇即位の礼、14~15日大嘗祭、16日から大饗宴が開催され、大阪市電では10日から8日間花電車を運行しました。乗換券は日付を入れて事前に印刷していたので、路線が拡大して、乗換客が増大すると、当日分の乗換券が不足することもあり、日付の印刷されていない補助的な乗換券も使用しました。大礼期間中も、15日・17日は加刷のない通常の乗換券の使用が確認されていて、予想を上回る人出だったことが分かります。
なお、乗換券の裏面には各種の広告が掲載されていました。本資料は京阪電車による京都嵐山観光に関するものです(画像2枚目)。表面だけではなく、裏面の広告からも当時のいろいろな世相を読み取ることができます。
本資料は、2019年10月9日(水)~12月2日(月)開催の第85回企画展 Osaka Metro開業1年「大阪市営交通114年の軌跡」にて展示しています。