アイヌの人びとが様々なまつり(祭祀)で使う道具の中で、イナウとよばれる御幣のような木棒と、このパスィ(酒箸)はことに重要な役目をもっています。共に人間の祈りを補いながら、神々に伝える仲立ち(媒介)をしてくれると考えられています。まつりには神々に捧げる酒を欠かすことはできません。漆塗りの杯台(はいだい)の上に、酒を入れた漆塗りの椀をのせ、さらにその椀に渡すようにこの酒箸を置きます。左手で椀を台ごと持ち、右手で持った酒箸の先を椀内の酒につけつつ、祈りの言葉を述べながら、イナウ(御幣)に酒のしずくをふりそそいで捧げます。写真の酒箸はイクパスィとよばれる祖霊のまつりや熊送り(熊まつり)以外のまつりに使われるタイプのものです。