東海道島田宿と金谷宿の間にある大井川は水の勢いが強く、また政治的配慮もあって橋がかけられず、東海道中最大の難所の一つでした。川を渡る方法としては、手引、肩車、蓮台(棒2本に板をわたし、旅客を乗せて数人でになって川を渡す台)による3種の渡し方があり、川越人足(かわごしにんそく)がそれに携わりました。この方法による渡しは、酒匂川(さかわがわ)など他の川でもおこなわれましたが、なんといっても大井川は規模が大きく、いつ川留め(通行止め)になるかという旅人の関心も強かったので、絵師達も競って川を渡る風景を描きました。
この図もその一つで、富士山を背景に女達が人足のかつぐ蓮台に乗って、悠然ときせる煙草をふかしながら渡る姿が描かれていて、一種のユーモアが感じられます。また、その向こうには参勤交代の大名輿(だいみょうごし)が渡っているさまが描かれています。