近年、街中の雑貨屋に行くと、世界各地の民族衣装の図柄を引用した「ネイティブ柄」と呼ばれるデザインの小物をよく目にします。伝統的に育まれてきたデザインは、人間味を感じさせると共に、地域性が色濃く反映されます。この敷物もまた、アメリカ南西部の先住民ナヴァホの作風がよく表われています。
ナヴァホの社会では牧羊が盛んで、羊毛を使った重厚な織物が多くの家庭で織られています。そもそもは実用的な目的から寒さをしのぐために羽織るブランケットに使われていましたが、北米先住民の手工芸品の需要が高まるにつれ、様々な用途に使用可能な作品が生み出されていきました。これらの織物は「ラグ」と総称され、室内を彩るインテリアグッズとして広く流通しています。
デザインに目を向けると、やはり目立つのは巧みに配置された幾何学文様です。この敷物には大きな菱形が縦に三つ並んでいて、その菱形の内側は小さな三角形で埋め尽くされています。赤を基調とした色彩も配色と濃淡の妙によって、見る者に大きなインパクトを与えます。こうしたデザインは、英語で「目を眩ませる」という意味を持つ「アイ・ダズラー」と呼ばれることがあります。また、色鮮やかな染色は、従来の天然染料から19世紀末にアニリンなどの化学染料へ移行して可能になりました。ナヴァホの織物は消費者のニーズに応え、新たな技術を取り込むことで、現在の作風に定まっていったということが言えるでしょう。