天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化圓平人形「紙くず拾い」(えんぺいにんぎょう「かみくずひろい」)

中国 中国遼寧省瀋陽市
1930年代
高14㎝
資料番号:00441

展示中 1-0

20世紀前半における中国東北部の風俗を象った「圓平人形」と呼ばれる土人形があります。この圓平人形を創作したのは、初代・小倉圓平(1887-1949)です。
小倉は兵庫県津名郡(現・洲本市)出身の陶芸家で、1921年頃に中国大陸へ渡り、煙草パッケージをデザインする仕事に携わります。そして1930年頃、奉天(現・瀋陽市)市内に「趣味の店 圓平人形」を開店し、圓平人形およびその他陶器類を制作・販売しました。
圓平人形の材料には、瀋陽市北部付近の土を使用しました。それらを捏(こ)ね、型に嵌(は)めて焼いてから彩色を施します。写真は道士の服を着た老人を象った人形で、紙くずを入れるための黒い籠(かご)を2つ携えています。手前の籠には白字で「敬惜字紙」、後方の籠には「同善堂」と書かれています。なお、籠の紐部分は麻ひも、右手に持っている先端に鉤(かぎ)が付いた道具(紙屑を拾うためのものか)は、竹ひごと針金で作られています。
かつて中国では、文字が書いてある紙(字紙)を粗末に扱う行為は、文章や学問を司る神を侮辱することになると考えられました。そこで、地面に落ちている字紙があれば丁寧に拾い集め、「字紙亭」と呼ばれる炉へ運び焼却しました。この風習を「敬惜字紙」といいます。また「同善堂」とは、清代に天然痘対策の為に奉天市内に創設され、その後貧民救済・社会事業も展開した施設の名称です。