アフリカ大陸の東部に位置するエチオピアには、早くも4世紀にキリスト教が伝えられたといわれています。エチオピアのキリスト教は、ヨーロッパから遠く離れ、周囲を異教徒に囲まれながらも、伝来当時の信仰を守り抜き、長きにわたる独自の発展を遂げ現在に至ります。
エチオピア最大の教派、エチオピア正教会ではヨーロッパの正教会と同様に「イコン」と呼ばれる聖像画を祈りの際に用います。この掛け布イコンは縦の長さが180cmを超える大きな布に描かれており、礼拝所の壁に掛けられるものと思われます。図柄は長方形に仕切られた4つの場面と、それらをぐるりと取り囲む周縁部に分けられます。中央の4つの場面は左上から時計回りに、聖母子(マリアとキリスト)、十字架のキリスト、戴冠したマリア、竜を退治する聖人ゲオルギオスであろうと思われます。いずれもエチオピアのイコンによく見られるモチーフです。周縁部には顔に羽根が生えた姿で表現される天使が25人も描かれています。