天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化回転式炬燵(かいてんしきこたつ)

地域:推)奈良 昭和
全高41.5cm

写真3枚目(左から)
湯たんぽ、炬燵(こたつ)、行火(あんか)、電気ストーブ、回転式炬燵
資料番号:75.0087

展示中 2-12

元々日本の住宅は夏向きにつくられているといわれます。平安時代の貴族の邸宅、寝殿造では広い板敷の間を板戸で外と隔て、御簾(みす)や几帳(きちょう)といったカーテンのようなものを自分の周囲にめぐらせるぐらいなので、真冬はさぞかし寒かったことでしょう。そのせいでしょうか、『枕草子』には暖房具である火桶(ひおけ)や炭櫃(すびつ)の記述が多く見られます。火桶は火鉢、炭櫃はいろりの一種です。「寒きこといとわりなく、おとがひなど落ちぬべきを、からうじて来着きて、火桶ひき寄せたるに、火のおほきにて(中略)いみじうをかしけれ」。これは清少納言が節分の夜遅くに帰ってきて、あごも落ちそうに寒かったが、火桶の火が暖かくて喜んでいる様子です。部屋全体を暖めるセントラルヒーティングなどはなく、貴族でも手や足をかざしてあたためる部分暖房しかありません。庶民はいろりが暖房、調理、照明を兼ねた設備でした。いろりのない町家では、近世以降にようやく火鉢や炬燵(こたつ)が庶民の手の届くものとなり、石油ストーブや電気ストーブが普及する昭和40年代まで長く使われました。薪を燃やすいろりからは煙が出ますが、炭を使うこれらは煙が出ないため部屋が汚れません。
炬燵は、炭を入れた炉の上にやぐらと呼ばれる木枠を置いて、その上から布団をかけて足腰や手をあたためます。室町時代中頃にはいろりから発展した掘炬燵が生まれましたが、本格的に炬燵が行き渡るのは木綿布団が庶民にも使われるようになった江戸時代中期以降です。写真は回転式炬燵で、置炬燵の一種です。普通の木枠は一辺が45cm位の四角い形ですが、これは炭火を入れた鋳物が六角形の木枠に接合されているため、蹴とばしても木枠と接合部が回転して火入れは水平に保たれます。仕組みから「安全炬燵」とも言われました。就寝時のぬくもりを求めて工夫された道具の一つです。

暖房具いろいろ その1(第94回企画展「くらしの道具-今昔モノがたり-」関連)