天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化這子(ほうこ)

hoko

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京都 江戸時代 高41.0cm
資料番号:67.1621

展示中 1-0

這子は白絹の四隅を縫い合わせて手足を作り、綿を詰めて頭を差し込んだ布製の人形です。絹糸の黒髪を金糸で束ね、顔は鼻筋を盛り上げて、目と眉は細筆でうすく描き、朱をいれて唇を表現します。うつぶせにすると乳幼児が這い這いする姿に似ていることからこの名前がつきました。「婢子(ほうこ)」、「お伽(とぎ)這子」とも称します。
平安朝以来、上流階級は乳幼児の守りとしてこれを枕元に飾り、病気や災厄が大切なわが子にとりつかないよう祓いの形代(かたしろ)としたのです。後には婚礼道具にも加えられ、雛段にも飾るようになり、祓いというよりは末永く身を守る形代へと用途が変化していきました。感触が柔らかいため、次第に手遊び人形として子どもたちに親しまれるようになります。いわゆる縫いぐるみの元祖です。やがて民間にも普及し、庚申信仰と結びついて生まれた縁起物の「括り猿」、「猿ぼぼ」はこの這子の手足を括った姿です。現代も身近に置いて愛情を注ぐ縫いぐるみのルーツが、日本では自分の災厄を祓い、身を守ってくれる形代であったということは大変興味深いことです。
白絹のままという這子も多いのですが、本資料は着物を着て帯を結んでいます。這子は柔らかなボディーで自立しないので、もたせかけて飾っていたことが江戸時代の書物の挿絵からわかります。