天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化凧「鼠の嫁入り」(たこ「ねずみのよめいり」)

中国 山東省 濰坊(いぼう)市
2009年頃制作
最大幅:60cm 素材:竹、絹
資料番号:2011E54

展示中 1-0

本品は立体的な凧(たこ)で、骨組は竹、膜は絹でつくられています。絵柄は、中国の民話「鼠(ねずみ)の嫁入り」の一場面を表現しています。中央にみえる輿(こし)は筒状になっており、筒の内部に風を受けて揚がります。「鼠の嫁入り」のあらすじは地域によって異なりますが、中国で多く知られている話は以下の通りです。
ある鼠夫婦に娘がいました。親鼠は最も強いものに娘を嫁がせたいと思い、まず太陽に頼みました。しかし太陽は「私は駄目です。隠されてしまう雲が怖い」と言いました。親鼠が雲のところに行くと、雲は「吹き飛ばされる風が怖い」と言います。そこで風のところへ行くと、風は「立ちはだかる壁が怖い」と言います。壁のところへ行くと「穴をあける鼠が怖い」と言います。
そこで親鼠は「では鼠が一番強いことになる。しかし我々は猫が怖い。娘は猫に嫁入りさせることにしよう」と決めました。すぐ猫のところに行き「娘の婿(むこ)になってくれないか?あなたがいれば何も怖くない」と言いました。猫は彼らの申し出を聞いて喜び、祝言(しゅうげん)をあげることになりました。嫁入りの日の夜、鼠の花嫁は4匹の鼠によって担がれた豪華な輿に乗り込みました。輿を囲む花嫁行列は旗を掲げ、ラッパを吹き、銅鑼(どら)を鳴らして猫の家へと向かいます。本品はこの場面を表現しています。
一説によると「鼠の嫁入り」の絵柄には、繁殖力の強い鼠にあやかって「夫婦が子宝に恵まれる」等の願いが込められているそうです。