ブラジルのアマゾン川流域に暮らす先住民は、古くから鳥の羽根を用いて様々な道具を作ってきました。大航海時代にブラジルに到達したヨーロッパ人は、羽根飾りを全身にまとった先住民の様子を驚きと共に記録しています。
この冠は、トゥカーノと呼ばれる民族集団が、祭りの際にかぶるものです。骨組みを椰子の葉の軸で立体的に成形し、長短交えたコンゴウインコの羽根で巧みに飾り付けています。まず目に付く長い尾羽根は垂直方向に並んでいるため、全体的に高くそびえる印象を受けます。他方、縁の部分にバランスよく配された赤・青・黄の短い羽根は彩りを添えています。
祭りでこの冠をかぶる者は、鳥の動きを真似た踊りを披露します。鳥は空を飛ぶという人間にない能力を持っているため、先住民にとって霊的な意味合いを持つ動物なのです。
かつて、こうした羽根の供給源となる鳥は、狩猟を通じて捕獲されていました。致命傷を与えない当て身用の矢で生け捕りにする場合や、雛のうちに巣から拾ってくることもありました。そしてペットのように飼育し、必要に応じて弱らせない程度に羽根を抜いていたのです。
近年は森林伐採によって鳥の生息数が激減し、先住民でさえ羽根を入手することが困難になっています。美しい羽根はもはや売買の対象となり、かつてのように身近な素材ではなくなりつつあります。ちなみに、現在ではこうした羽根を使った工芸品は国外持ち出しが禁止されているようです。