祭儀「刺球」(または「刺福球」)は、台湾の主に南部に暮らすパイワンの「五年祭」という祖霊祭の中で行われます。
パイワンの始祖の霊は大武山という霊山に宿るとされますが、5年に一度、その祖霊は故地、大武山からパイワンの各集落を巡って南下し、最南端にある屏東県恒春鎮に至るとまた北へと引き返し、再び大武山に帰るといいます。パイワンの人々はこの祖霊を迎えるべく、それぞれの集落で「五年祭」を催します。「刺球」は、その中でも特に重要な祭儀で、祖霊からの福を授かるといわれるものです。
集落毎に「刺球」の形態は異なりますが、まず球刺し用の竹竿「ジュジャト」(長さ約10m)を持った首長をはじめとする複数人の青年(人数が多い集落では約30名)が、竹や木を組んで作った腰掛けに円陣を組んで座ります。その円陣の中心に立つ祭司一人が、紐で結わえた当該資料の籐でできた球「カプルン」を空中に真っ直ぐ、そして竹竿よりも高く放り投げます。そして祭司を囲んだ青年たちが、それぞれが持つ竹竿で、落ちてくる籐球を突き刺し、競うのです。投じる球の数も集落によって異なりますが、一球ずつ、例えば財産、豊穣、狩猟、健康、悪霊除け等の名称がつけられています。それぞれの球を竹竿で刺すことができれば、これらの名称に応じた福を授かるとされています。
もう一方の当該資料は「サラス」と呼ばれるもので、竹竿の先端部に取り付けるものです。球を刺す、または球をひっかけやすくするために竿の先には円環状の鉤がついてます。しかしながら、高く放り投げられた小さな球を、竹2,3本を接いで作った約10mの竿で突き刺すわけですから、なかなか球が先端部に刺さらないこともあり、この祭儀は長時間にわたり行われることもあるようです。
「刺球」が終わると、祖霊を送るための盛大な歌舞が披露され、「五年祭」は終了します。