江戸初期に淡路地方から伝わったとされる阿波(徳島)の人形浄瑠璃芝居は当時の藩主の保護もあり、その後明治時代まで大いに隆盛をみました。当地では農閑期などに仮設の小屋や村々の神社の境内に建てられた舞台で上演され人気を博し、単なる娯楽以上に神前奉納の芝居でもありました。この傾城とは遊女のことで、豪華な衣装を着けた阿古屋は「檀浦兜軍記」に登場します。作者「天狗久(てんぐひさ)」本名:吉岡久吉〈安政5年(1858)~昭和18年(1943)〉は85歳で亡くなるまでに約2千個ほど製作したといわれます。現在徳島の県指定文化財となっている人形の頭の7割が当人の作品です。今日でも淡路・阿波では地元の人々が中心となって伝統の人形芝居を後世に伝える努力が続けられています。