北海道の先住民族であるアイヌの伝統文化を代表するもののひとつに樹皮繊維で織った着物“アットゥシ”があります。日本語では厚司(あつし)と表記したりします。アイヌの伝統的な着物の素材としては動物の毛皮、鳥の皮、魚の皮、さらに植物繊維があります。着物用の糸にする植物にはオヒョウの他にハルニレ、シナノキ、ツルウメモドキなどの樹皮やイラクサという草があげられます。山から採ってきた樹皮を手間暇かけて糸にし、地機(じばた)で布に織り上げます。仕立てた着物には苦労して手に入れた木綿の布きれをアップリケのように縫い付け、さらに木綿糸で丹念に刺繍(ししゅう)をして飾ります。この模様は単なる飾りではなく人間に悪さをする霊から身を守る呪力を備えていると信じられています。