アフリカ大陸西部のガーナ周辺に居住するアシャンティと呼ばれる人々は、17世紀後半から20世紀初頭にかけてアシャンティ王国を築いていました。
アシャンティは特徴のある椅子を作る集団として知られ、彼らの椅子には、湾曲した座部を支える支柱にさまざまな文様や動物、人物などの彫刻が施され、それらによって所有者の権威が表現されることも多々あります。アシャンティの人々にとって椅子は特別な意味合いを持ち、その最も典型的な例が彼らの伝説に表れています。アシャンティの王に代々継承される黄金の椅子は、初代の王の時代に空から降りてきたというもので、アシャンティの人々の魂が宿ると考えられました。黄金の椅子はアシャンティの人々の象徴であり、またそれを所有することで王の権威が示されたのです。彼らにとって椅子は実用品として使うだけでなく、精神的、また儀礼的な意味を持つといえます。
アフリカの椅子の多くは、ひとつの木の塊を彫って作られる一木造であり、製作者には高い技量が必要とされます。かつては、アフリカでは椅子は個人が所有するものと考えられ、たとえ近しい人同士であっても共有することはありませんでした。しかし、時代の経過とともにそういった考え方も徐々に消えつつあります。