天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化トリ形笛吹ボトル(トリがたふえふきボトル)

ペルー北海岸
ガジナソ文化 前50年頃~後300年頃
長21.5cm 高14.5cm 土器
資料番号:28710

展示中 1-0

本例は、トリを象ったガジナソ文化の笛吹ボトルです。オウムのようにも見えますが、頭頂部に冠羽(かんう)が表現されないことから、コンゴウインコを象っていると推定されます。
笛吹ボトルは英語でホイッスリング・ボトルと言い、直訳すると「口笛のような音を出す瓶(壺)」となります。しかし古代アンデスでは、注口から液体を注ぎ入れて、器体を揺り動かして音を出していたと考えられています。その仕掛けは外からは見えませんが、土器の上部にとりつけられた「笛玉(ふえだま)」にあり、空洞の球にあけられた穴に適切な角度で空気が入れられると音が鳴ります。
笛吹ボトルは紀元前1200年頃にエクアドルの海岸部でつくり始められたと言われ、中央アンデス地帯に伝えられると、スペイン征服後の紀元後1600年頃まで各地でつくられました。その用途については十分に解明されていませんが、墓に副葬されていたり、墓の近くに建てられた部屋状構造物から出土したりすることから、葬送儀礼で使用された可能性が指摘されています。
ガジナソ文化は、ペルー極北海岸のピウラ地方から北海岸のビルー川流域にかけて広がり、紀元前50年頃から紀元後300年頃にかけて栄えたと考えられています。しかしその後も滅びずに、続くモチェ文化や、後のランバイェケ(シカン)文化に統合されながら、異なる集団として生き延びた可能性が指摘されています。
本例の胴部の文様にはネガティブ技法が用いられ、その工程はろうけつ染めの要領で行われます。まず、乾燥させた器表面に蠟や粘土紐で文様を描いて顔料につけます。そして取り出した後、乾燥させて焼き上げ、文様を浮かびあがらせます。本例の頭部側の胴部には市松模様が、注口部側の胴部には一条の線の下に連続した渦巻き文が描かれています。コンゴウインコを象りながらも、人身供犠を想起させる渦巻き文が描かれる興味深い資料です。

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