アフリカ大陸西部の国、ブルキナファソに暮らすボボと呼ばれる民族集団では、伝統的に精霊崇拝が守られています。仮面はそうした信仰と関連が深く、農耕儀礼、通過儀礼、葬儀の際に用いられます。
この仮面は、羚羊(れいよう)あるいはアンテロープと呼ばれる動物の顔を象ったものです。少し反り返った長い二本の角と、額から口先にかけて大胆に湾曲したフォルムが仮面の造形にアクセントを付けています。表面をよく見ると、黒く色付けられた三角形や菱形の幾何学模様が散りばめられていることが確認できます。
こうした素朴で力強い造形が特徴の「アフリカン・アート」と総称される作品は、20世紀初頭、西洋美術の潮流に大きな影響を与えたことがよく知られています。その代表的な芸術家として挙げられるのがパブロ・ピカソ(1881~1973年)です。ピカソは既存の概念、価値観を覆す美術表現を生み出していく過程で、アフリカン・アートの要素を自らの作品に組み込んでいます。「アヴィニョンの娘たち」(1907年)に描かれている女性の顔は、まさにアフリカの仮面そのもののように見えます。