酒壷。儀式のときに酒を入れた壺です。基本的には筒形の器形ですが、4方向にひれのような飾りが飛びだしていて、非常に複雑な外形になっています。文様は3段に分けて施されています。いずれも、実在しない想像上の動物ばかりです。中段が主たる文様で、画面いっぱいに大きな顔がひろがっています。中央に鼻筋が通り、その左右に角・眉・目・耳・鼻・口が左右対称に配されています。これは「饕餮(とうてつ)」とよばれる怪獣の文様で、殷周時代によく使われました。殷周時代の青銅器の多くは日常には使用しない祭り専用の器です。神々や先祖をもてなすために、その表面には神々の世界を再現したのでしょう。内面の底に「作宝隯彝」と文字が刻まれています。