これは鞆(とも)と呼ばれる武具を写した埴輪です。
鞆というのは三日月形をした袋状の革製品で、矢を射る際左腕に装着して弓の弦(つる)が左手にあたるのを防ぐために用いられました。中には獣毛などをつめてクッションとしました。『万葉集』に「ますらをの鞆の音すなり……」と読まれているように、鞆に弦があたると大きな音を発したようです。端につけられた紐で左腕に結び付けられましたが、この埴輪は蝶々結びした様子を粘土紐で表現しています。
古墳時代の鞆の実物は残されていませんが、本例のように鞆そのものを表現した埴輪や、鞆を左腕に着装したり、腰にぶら下げた武人埴輪の例が知られています。
時期は下りますが、正倉院には革でつくられた黒漆塗のものが残されています。