天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術馬具 心葉形杏葉(ば  ぐ   しんようけいぎょうよう)


宮崎県児湯郡高鍋町 持田古墳群
古墳時代後期 6世紀
幅11.0㎝ 鉄・金銅製
資料番号:068-212

展示中 3-14

【重要美術品】

馬はもともと日本列島に生息していた動物ではなく、5世紀の古墳時代に朝鮮半島から連れて来られました。同時に馬を飼うための専門的な知識を持つ人々が渡来し、馬具ももたらされました。当時の馬具は鉄板に金銅板を重ねて作られていたので、金色に輝いて装飾性に富んでいました。馬を飼うことは、広い土地を有し、専門的な知識を持つ人を配下において、美しい馬具も所有するということになり、馬具は権力の証として古墳に副葬される宝物となりました。
やがて朝鮮半島製の馬具を手本に国内生産が始まり、日本列島独特の形の馬具が生み出されていきましたが、朝鮮半島製の馬具には形や装飾が国産品より細かく技術が高いものがあります。
杏葉とは馬の胸や尻に吊り下げる飾り金具で、騎乗には必要がないものですが、飾ることが目的であるだけにかえって意匠が凝らされ、さまざまな形や文様の杏葉が作られました。この杏葉は一見楕円形に見えますが、よく見ると縁に9本の鋲が打ってあり、鋲の部分は外形が半円形に突出しています。下方の中央も突出しているので、心葉形と呼びます。9個所が突出した形の鉄板に、金銅で覆った飾りの部品を重ねて鋲留めしてあるのですが、その飾りの部品には美しく湾曲した文様が作り出されています。 また鋲は銀製で、花の形に加工されています。同形の杏葉が計5枚あり、一緒に出土した銜留めの飾り板(鏡板)も湾曲した文様と銀製の花形鋲で装飾されています。とても手の込んだ細工を施した、まさに朝鮮半島製の逸品です。
朝鮮半島南部に位置し、200基余りの古墳で構成される大古墳群がある池山洞から、よく似た杏葉が出土したと伝わっています。