天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術石冠(せっかん)

出土地不詳 縄文時代晩期
高さ8.1cm
資料番号:067-310

展示中 1-0

石冠は冠に似た形状からその名がつけられた石製品です。掲出のように楕円形あるいは円形の基底部から短く立ち上がる円柱に半球状の膨らみを付けたものや、上部が斧形、山形をしたものがあります。また底面には凹みをもつものがあるのですが、斧形のものでは多くに認められます。凝灰岩・砂岩・安山岩などでつくられ、大きさは10cm前後のものが多く、20cm前後の大形品もみられます。
その分布は縄文時代晩期の富山・石川・岐阜県を中心とする北陸・中部地方に集中し、石剣などの分布と重なることが指摘されています。遅れて現れる土冠(どかん)は石冠が希薄であった東北地方などに分布します。
その用途については実用の具として食物調理具や石斧、あるいは武器として使用されたとするもののほか、石棒と同様に性崇拝の対象であったとする説があります。
後者の説については、掲出のように先端の半球状の膨らみが石棒のように男根状を呈することや、斧形のものについては、これを石棒頭からの変化とみたり、あるいは斧は男性の使用する道具であることから、石冠を男性の象徴とする見方があります。
石冠が希薄であった東北地方に土冠が分布するのも、石冠が実用の道具ではなく祈りの道具であったことを示していると考えられます。