天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術青磁鉄斑天鶏壺(せいじてっぱんてんけいこ)

中国 東晋時代(4~5世紀)
高さ24.7cm 青磁
資料番号:2004A258

展示中 1-0

天鶏壺(てんけいこ)と呼ばれる器は、盤口瓶(ばんこうへい)の肩の一方に鶏の頭の形に作られた注口部が付き、もう一方の肩には口縁につながる長い把手が付く器形で、もっぱら東晋(とうしん)時代から初唐(しょとう)時代にかけて作られたものです。鶏頭壺(けいとうこ)や鶏口壺(けいこうこ)と呼ばれることもあります。いわゆる水注(すいちゅう)の形ですが、注口に穴のないものも多く、基本的に明器(副葬品)として製作された器と考えられています。掲出の作品は注口にきちんと穴が穿(うが)たれている数少ない例で実際に水注としても使用可能ですが、やはり明器として製作されたものと考えて良いでしょう。こういった天鶏壺は、墳墓の入り口付近に置かれて用いられている出土例がいくつか知られており、鶏が持つと考えられていた辟邪(へきじゃ)の力で墓の主を邪悪な存在から守護する働きを担っていたのかもしれません。天鶏壺の多くは青磁や黒釉磁で、この作品は釉色の美しい典型的な越州窯青磁(えっしゅうようせいじ)です。胴を球状につくる器形や鉄斑文の用いられ方などから東晋時代(4~5世紀)の製品であると考えられます。越州窯(越窯)は、中国・浙江省(せっこうしょう)を中心に発達した青磁窯で、後漢時代(1世紀頃)に開業して以降1000年以上にわたって長く活動した中国陶磁史を代表する窯です。越州窯の長い歴史の中で、この作品のような古い時代の製品は特に古越磁(こえつじ)と呼ばれることもあります。天鶏壺の形式が出現するのは3世紀末頃で、古越磁の早い段階から存在する器形なのです。