剣身の断面が六角形をなした、青銅製短剣です。茎(なかご)は長方形で、太い目釘のような留具が2本残っています。別に作られた柄を取り付けていたと考えられます。両面の鎬(しのぎ)部にはそれぞれ、切先に向かって雲を引き裂くように、並んで飛翔している4羽の鳥が描かれています。雲と鳥には銀が象嵌されていたようですが、現在は雲の部分にしか残っていません。背景部分はニエロ技法で黒い色調にしています。ニエロ技法とは、銀・銅・硫黄による化合物を用いたエナメル技法のことです。2本の留具の頭部には鍍金が施されています。類例がギリシアの古都ミュケナイにある円形墓地Aから出土しており、本例もほぼその頃に用いられたものでしょう。