2匹の怪獣を両手で捕らえた人物像を、壺形をなした支えに差し込んでいます。典型的なのが右例です。左例はあたかも両腕を挙げているように見えますが、少し退化して簡略表現されたものです。この人物像を「動物の支配者」とか「ギルガメシュ」、あるいはゾロアスター教で従順と献身の化身とされる「スラオシャ神」だとされることもありますが、神なのか英雄なのかも分かっていません。
いずれも蝋型鋳造(ロストワックス法)によるものです。まず作りたい原型を蝋で作ります。これを包むように耐火粘土で被って、焼成します。そうすると粘土は固まりますが、蝋は溶けてしまいます。予め作っておいた穴から熔けた蝋を流し出すと、作りたい形状の空洞ができます。ここに穴から融かした青銅を流し込めば、原型と同じものができあがるという方法です。
この種の青銅器は3つに分類されています。第1分類は2匹の立ち上がった動物から成っており、お互い向き合っています。第2分類は中央にいる人物と、左右から立ち上がって襲う捕食動物から成っています。そして第3分類は人物の頭のある単純な筒になったものです。本例2点はしたがって、第2分類に属することになります。出土例から第1分類が最も古く、時代とともに第2と第3分類へ移行することが分かっています。左例はやや退化していますので、第2分類の中でも新しい時期に年代付けられると考えられます。
類例は多く、かつ世界中の博物館・美術館や個人のコレクターに広く所蔵されていますが、その名称はまちまちです。竿頭飾、先端飾、スタンダード(軍旗)、護符、管、あるいは筆記棒などという風に。これらの名称の中にはこの青銅器の特殊な機能や意義を示唆しているものもありますが、たくさんの呼び方があること自体が、その本当の意味がまだ分かっていないことを示しています。
「これは何に使われたものですか?」この単純明快な質問ほど、型式や編年を熱弁する考古学者を困らせることはありません。