類例のない獣形の霊獣像です。岩座の上に座り、顔・胴・四肢・尾は牛のようです。口はさけて大きく、歯牙がならび、巻いた舌を出しています。鼻も象のように長く、上に巻くようにのびています。角(つの)は根もとで大小二つに枝分かれし、大きい方は上にのびて先端は前方に湾曲します。胴部は太った牛をうまく写実的に作っていますが、頭はなんともグロテスクで、霊獣と呼ぶより、むしろ怪獣の方がふさわしいでしょう。
緑・褐・白の釉薬をていねいに施し、胴には白色の斑文(班点)を飾っています。この斑文は、最初に白釉を施したあと、斑文部に蝋(ろう)をおいてから緑褐紬を流しています。こうすると白い斑文部が残ります。これを花斑と称します。さらに顔は口・鼻・目・角をそれぞれ3色で塗り分け、目はこちらをにらみつけ、余計に恐ろしく感じさせています。墓中にあって邪悪を遠ざけ、霊鬼に匹敵する強い霊力をもつためには、むしろこのような表現がいいのかもしれません。