天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術三角縁龍虎鏡(さんかくぶちりゅうこきょう)


奈良市富雄丸山古墳出土 古墳時代
径24.6㎝ 青銅製
資料番号:日1222

展示中 3-14

【重要美術品】

「卑弥呼の鏡」とも呼ばれる三角縁神獣鏡は500面あまりが出土していて、約150種類の文様があります。そのなかで神の姿を描かないのは数種類のみです。神の姿がないので厳密に言うと「神獣鏡」と呼ぶのはおかしいということになりますが、縁が三角形であるという特徴を重視して、三角縁神獣鏡に含めて数えられています。直径は24㎝を超えており、三角縁神獣鏡のなかでも大型です。
胴体が亀の甲羅のような形の獣が3頭と、首の長い獣が1頭描かれています。多くの三角縁神獣鏡は神も獣も頭を中心に向けて描かれるので、どの方向から見ても文様のどれかが逆向きになりますが、この鏡は首の長い1頭を正位置に置くと鈕を挟んだ向かい側の1頭も正位置に、左右の獣は横向きになります。よく見るとその時上に来る獣の角と尾の間に、漢字の「龍」が右に90度回転して書かれています。この獣は龍だと説明を付けておかないと、分かって貰える自信がなかったのかなと考えると楽しくなってきます。同笵鏡は岡山県湯迫車塚古墳・伝奈良県・滋賀県大岩山古墳・群馬県茶臼山古墳の4面が知られています。
出土地である富雄丸山古墳は大和で最大の円墳と認識されてきましたが、2017年に奈良市教育委員会が測量した結果、直径約110mの国内最大の円墳であることがわかりました。
天理参考館には富雄丸山古墳出土とされる三角縁神獣鏡がこのほかに2面あり、さらにもう1面が奈良市の指定文化財になっています。また2019年に行われた発掘調査で、墳丘頂部から別の鏡の破片が出土しました。そのほかに精巧な細工の石製品も知られています。
富雄丸山古墳は前方後円墳ではなく、周囲にほかの大型古墳もありませんが、墳丘の大きさと副葬品の質の高さから、葬られた人はヤマト王権を支えた有力者だったと考えられます。