天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術緑松石嵌入青銅曲内戈(りょくしょうせきがんにゅうせいどうきょくないか)

中国 殷時代後期(前13~前11世紀)
長さ40.8cm 青銅・トルコ石
資料番号:36-191

展示中 1-0

戈(か)は古代中国を代表する武器の一つです。木製や竹製の柄(柲)の先端に装着して用いる武器で、柄に対して刃を伴う短剣のような身が横方向に付くものです。戈は、敵に打ち込んだり、斬りつけたり、手前に引き倒したりすることのできる使い勝手の良い武器で、新石器時代後期に出現して以降、秦時代頃まで主力武器として用いられました。特に、戦闘用の馬車(戦車)を用いた戦闘では、多様な攻撃方法が採れる戈は重要な武器として用いられていました。
写真の資料は、殷時代に作られた青銅戈で、青銅製の板材の表裏両面にトルコ石を嵌め込んで装飾されているとても美しい戈です。トルコ石の象嵌(ぞうがん)によって、刃(援)の根元には獣面文が表され、中央から先端にかけて蛇文が表現されています。内(柄の後方に突き出る部分)には、刃を飲み込もうとするかのような龍文が優れた造形力で表現されています。
この資料は長さが40cm以上あり、一般的な戈に比べてかなり大きい資料です。また、それに対して身は非常に薄く、実用に耐えうる強度はなかったと考えられます。おそらく儀礼用に製作された品であったのでしょう。 トルコ石は古代中国で優れた霊力が宿ると信じられていた玉石の一種として用いられ、強い魔除けの力を有していると考えられていました。また、鋭利な武器にも同様に魔除けの効果があると考えられており、古代中国では墳墓の中には数多くの武器が副葬されました。これらの点を踏まえて考えると、掲出の資料は、強い魔除けの効果を持つ特別な副葬品として、被葬者の側近くに置かれたものであったと考えられます。