リュトンという言葉は、ギリシア語のリター(rytha:流れる)という動詞から派生したもので、底部ないしは突端部に流出孔のある容器の総称として用いられています。
これは山羊の頭部をかたどった胴部に、円錐形に開いた口頸部が連なるリュトンで、胴部には環状の吊手があります。鼻先には小さな流出孔が開けられており、ここから液体を注ぐのです。動物をかたどった容器に注入された液体は、動物が持つ底知れぬエネルギーを帯びると考えられていたと思われます。口部から注ぎ出される液体は聖なるものと崇められていたことでしょう。