鉄製の大きな剣と、柄と鞘(さや)の表面を外装していた金製飾りです。木製の柄と鞘は朽ちて現存しません。ササン朝ペルシアの長剣は、銀皿や摩崖浮彫(まがいうきぼり)にしばしば描写されていますが、現存しているものは少ないです。吊手部に唐草文を、柄・鞘部には鱗状の文様を打ち出しています。裏面は素文です。
2個のP形をなす吊手が鞘口に近いところに間隔をおいて取り付けられていることから、長短2本の帯でベルトに斜めに吊られていたものと考えられます。ササン朝初期の長剣は、ベルトに垂直に吊り下げられてるのが常で、このような吊手のある鞘は、ターク・イ・ブスタンの帝王騎馬像に見られるように、ササン朝も末期にならないと現れません。