唐時代の墓の中に副葬された、座って音楽を奏でる女性と、長い袖を振りつつ優雅に踊る女性の姿をうつした俑(よう)のセットです。死後の家である埋葬主体部において墓主人の生活を楽しく豊かなものとすべく、その専属楽隊として埋納されたものです。全体的にその表現は写実性が高く、極めて洗練されて美しいです。衣服の色彩は、暖色系の鮮やかなオレンジと赤を基調としており、全体に明るく艶やかな雰囲気を醸し出しています。
本来の配列は不明です。写真では、後列左から縦笛、横笛、排簫(はいしょう)、琵琶(4弦と5弦)、箜篌(くご、ハープの源流)を演奏する楽人、前方左側に拱手の二人(歌い手か)、右側に踊り手を並べています。
隋唐時代の宮廷音楽には、儀礼後の宴席で奏される音楽「燕楽」(えんがく)があり、その上演様式のひとつ十部伎(じゅうぶぎ)が唐初に完成しました。また堂上において座ったまま演奏する楽人を坐部伎といいました。これらの俑はその上演の様子を今に伝えるものです。