「熨人(うつじん)」とは,熨斗(うっと)(火(ひ)熨斗(のし)=昔のアイロン)を一定の高さで固定支持する専用台です。漢時代に誕生した熨斗という道具は、柄杓に似た形をしており、長い柄をもっていました。柄の先端に装飾を持たない、無飾のノーマルな柄は、断面が半円形または逆三角形に近い形をしているものが多く、熨人にも同様な形の孔があいており、そこに熨斗の柄を挿し込んで使用したのです。
青銅製実用品は後漢時代には登場しており、発見例が多くはないことや、大型墳墓で発見された例が知られており、社会の上層階級の人々の屋敷で使用されたものと推測されます。青銅製熨人の中には、そのものの名前が記されている自名器(じめいき)がありますので、こうした形態・機能をもつものが、当時「熨人」と称されたことがはっきりとわかります。本資料は、それを模した陶製の副葬用明器です。洛陽とその周辺地域を中心に出土していることから、当時の首都とその周辺で、青銅製実用品がよく使用されたことを反映して、お墓にはその模型明器がよく副葬されたのだと考えられます。