法隆寺は金堂、五重塔など世界最古の木造建築のほか多くの国宝を所有することから、「法隆寺地域の仏教建造物」として1993年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。歴史も古く、607年に聖徳太子によって用明天皇の病気回復を願って建てられたのが起源と伝えられます。創建当初の規模は今よりも小さく、寺名も斑鳩寺あるいは若草伽藍と呼ばれ、建物は今の境内地の南東方に位置していました。『日本書紀』には670年に火災に遭(あ)ったことが記され、焼失後新たに西院伽藍(さいいんがらん)という名前で再建されたのが現在の法隆寺といわれます。
掲出の資料は、その西院伽藍創建当時の金堂や塔の軒先を飾った瓦です。写真の複弁八弁蓮華紋軒丸瓦(ふくべんはちべんれんげもんのきまるがわら)は金堂に葺(ふ)かれていた瓦であり、この紋様をもつ瓦を法隆寺式軒瓦と呼んでいます。
複弁八弁蓮華紋軒丸瓦は、蓮(はす)の花(華)を表現したもので、中央にめしべ(中央の粒)とおしべ(中央の粒を取り囲む2重の粒)を表し、周囲に複弁と呼ばれる2枚1組の蓮華(れんげ)の花びら8弁を飾ります。中央に向かって強く盛り上がる表現は、建物に合わせた重厚な趣(おもむき)があります。
朝鮮半島からもたらされた仏教文化が、最大に花開いた瞬間といえるでしょう。