天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術鼻曲がり土面(はなまがりどめん)

岩手県岩手郡雫石町鴬宿出土
縄文時代後期~晩期(約3000年前)
幅14.5㎝
資料番号:067-284

展示中 1-0

縄文時代の祭具といえば石棒と土偶が思い浮かびます。この2つの祭具は、縄文時代を通して北海道から九州に至る広い地域で使われました。出土点数は膨大で、青森県の三内丸山遺跡からだけでも2000点以上の土偶が出土しています。
それに対してこのような「土面」は、北海道から近畿と四国までの80遺跡から、147点しか出土していません。時期も縄文時代後期以降となっています。出土点数が多いのは東北で116点を占め、そのうち青森県と岩手県で83点なので、東北北部以外では特殊な祭具だったようです。なかでもこのような鼻が曲がった土面は、現実にはありえない表情を表現していて、土面の中でも特異です。青森県と岩手県の5遺跡から6点が出土しているにすぎません。
顔面全体がこんもりと湾曲して、両目は楕円形にくりぬいています。眉と鼻がつながっていて、顔面から直角に2㎝ほど立ち上がっています。口の楕円形孔が一部残っていますが、顔の右に寄っていて、右が下がっています。眉の横には、紐を通す孔が1個残っています。
人の顔より一回り小さく、目の位置を合わせると口がはみ出てしまうのですが、縄文時代の土面は人の顔より小さいものが多く、紐を通す孔がないものや目が貫通していないものもあるので、祭りの時に身につけたかどうか、定かではありません。