口縁部が八曲をなしたこの種の銀器は、高度で美しいササン朝の金属工芸の中でも群を抜くもので、中国にも多大な影響を与え、わが国では正倉院の金銅八曲長杯でよく知られています。1枚の厚い銀板をたたき出して成形しています。外面には削り出しや毛彫り等で、裸体婦人像や、枝葉をくわえた水禽(すいきん)、パルメットなどの文様を施しています。さらに鍍金が施され、絢爛(けんらん)たる作風を感じさせます。
イランにおける学術調査でも出土例がなく、またそれらしきものが描出された例も、わずかに中央アジア(タジク共和国)のペンジケントの壁画に認められるに過ぎず、著名な作品にしては不明な点が多いです。