天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術土符(どふ)

出土地不詳
室町時代~安土桃山時代
左上8.1×4.4㎝ 土製品
資料番号:日1096~1108

展示中 1-0

土符は、縦6㎝、横5㎝、厚さ1㎝弱程度の方形板状で上の方に円形の孔が開いた、素焼きの土製品です。片面には年号や干支と月を、もう一方の面には「米」、「人」、「馬」、「銭」のいずれかの文字と花押を、焼成前に刻みつけるのが基本的な形態です。三重県伊賀地方の限られた地域から約200点しか出土していない、珍しい製品です。
年号が書かれることから、製作された年代がわかります。今までの出土品で最も古い例は応永二十(1413)年、最も新しい例は天正十(1582)年と、室町時代中ごろから安土桃山時代にかけての約170年間だけ使われていたようです。月は10月が圧倒的に多く、11月が数例あります。花押は誰のものか特定できておらず、同じ形の花押が離れた場所から出土したり、数十年間同じ花押が使われている例があるため、人ではなく機関を表すと考えられています。使用方法については旅行許可証のようなもの、年貢を納めるときの荷札などの説がありますが、よくわかっていません。
天理参考館では、土符を19点所蔵しています。残念ながら出土地は不詳ですが、伊賀地方でしょう。写真のように1点ごとに色も形も違っています。割れているものもありますが、確認できる年号は康生元(1455)年から天正二(1574)年の約120年間です。
上2段のそれぞれ左から2個目と、3段目の左端には、籾の圧痕がついています。製作時に、近くに米があったということでしょうか。土符に書かれる文字に「米」、「人」、「馬」、「銭」、「十月」が多いことと考え合わせると、土符は秋に収穫された米に付けるために作られて、人と馬が運んで売ったか、納めたのかもしれません。中世伊賀地方の経済活動を示す興味深い資料と言えます。