天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術武人埴輪(ぶじんはにわ)


群馬県高崎市八幡原町
古墳時代後期 6世紀
復元高82.8㎝  土製品
資料番号:日950

展示中 3-14

【重要美術品】

昭和17年発行の埴輪の研究書に掲載されている、古くから知られる埴輪です。
鉄製の冑(かぶと)を被り、肩と上半身を覆う甲(よろい)を身につけた武人です。胴体の正面に刻まれた3本の縦線から、前開きの甲であることがわかります。胴体を廻る3本の横線は、鉄板の重なりを表しています。古墳時代の甲冑は、鉄製の部品を幅数㎜の革紐で綴じ合わせて組み立てる型式から進化して、より頑丈な鋲留めの型式が考案されたのですが、この埴輪では冑と甲に貼り付けてある丸いものが鋲を表しています。
出土地である群馬県は、大和で大型前方後円墳の築造が退潮気味になった古墳時代後期に大型前方後円墳築造の盛時を迎え、数多くの埴輪が樹立されました。特に形象埴輪は造形が優れており、人物埴輪は立つ・座る・ひざまづく、盛装・武装・祭儀の装束など多彩です。一方この埴輪は腕と下半身の表現ははじめからなく、顔は半円形の平らな粘土板に目と口の切り込みを入れ、鼻を貼り付けただけという、簡略な造形です。大きな古墳に立てられていたわけではないのでしょう。
そっくりな武人埴輪が同じ群馬県内の保渡田八幡塚古墳と、直線距離で約40㎞離れた埼玉県行田市の稲荷山古墳から出土しており、埴輪製作工人の移動に関しても興味深い例です。